24時間介護に人材・採算の壁

2012年 05月 25日 (金)

わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。


2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革であり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。


わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代となっており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。


人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。このことは、介護が必要となった場合でも同じである。


そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重される社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。


介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」である。


今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。


4月から介護保険で提供できるようになった24時間対応型の訪問介護・看護サービスが中国地方で低調だ。サービスが始まったのは米子市だけで、本年度中の開始見込みも全107市町村の約1割の12市町にとどまる。夜間の人材確保の難しさや中山間地域の採算性の悪さが背景にある。助成金制度を設けるなどして事業者の参入を促す自治体も出ている。


中国地方で唯一、24時間の訪問サービスに取り組むのは米子市の複合福祉施設・なんぶ幸朋苑。4月11日からヘルパーや看護師が夜も含めて1日数回、市内のお年寄り3人の自宅を巡回訪問する。電話があれば昼夜を問わず駆け付ける。松本恭治総合施設長は「住み慣れた家でケアが受けられると喜んでもらっている」と手応えを語る。


気掛かりなのは3人にとどまる利用者数。「特別養護老人ホームやデイサービスと一体で運営しているので成り立つが、単独だったら採算が合うかどうか…」と明かす。


広島市や福山市、岩国市など12市町も本年度中に民間事業者がサービスを始めると見込む。ただ、都市部が多く、島根県内では予定がない。点在する民家を回るのに時間と経費がかさむ中山間地域や島では、参入の計画が浮上していない地域もある。


2013年度の開始に向け、事業者を募る予定の三次市は「応じてくれる事業者がいるかどうか…」と不安そう。14年度の開始を目標にする庄原市も「降雪時の夜間に訪問できるかどうかなど不透明な部分もある」と打ち明ける。


中山間地域の苦境を見越し、岡山県は4月から中山間地域に限定して1回の訪問ごとに250円を報酬に上乗せする独自の助成制度を創設した。


介護保険に詳しい県立広島大の住居広士教授(老年学)は「24時間の訪問サービスは自宅で介護するために必要だが、基盤の施設や人員が不足している。自治体が補助金を出してモデル事業などを展開していく必要がある」と指摘している。


中国新聞

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